わが国は、2025年までにキャッシュレス決済比率40%にすることを目指しているらしい。
しかし、世間ではキャッシュレス決済をやめるところが増えている。
先週、たまにいく和菓子屋のレジ前に、キャッシュレス決済を止めたという貼り紙があった。
また、ファミリーマートも現金払いを歓迎すると宣伝している。
なぜだろう。
私たちが飲食店で食事をする。
その支払いは、キャッシュレス決済でも現金払いでも、支払う金額は変わらない。
しかし、お店はキャッシュレス決済にされると支払額の2~3%を手数料として決済会社に支払うことになる。
たとえば、お客が1,000円払ったとする。この場合、手数料は20~30円である。
なんだ20~30円か。お客はそう思う。
しかし、この認識は間違っている。
お店の側からこれを見ると、手数料の負担は1,000円のうちの20~30円ではない。
利益から20~30円を払っているのである。
もう少し詳しく説明する。
お客がお店で飲食する。支払いは1,000円である。
お店は、この1,000円から、材料費、光熱水費、人件費、家賃、販売管理費などを支出する。
それらを引いた残りが利益である。
飲食店の利益は業態や店舗その他の条件によって相当開きがあるが、一般的に8~9%と言われている。
すなわち、売り上げを1,000円とすれば、利益は80~90円である。
お店は、ここからさらにキャッシュレス決済の手数料を払っているのである。
もし、お客が現金で支払ってくれれば、店の利益は80~90円である。
しかし、キャッシュレス決済を使われれば利益の80~90円から手数料を20~30円引かれる。
その結果、利益は50円~70円になってしまう。現金払いとキャッシュレス決済では、利益が3割以上も違うのである。
お客は、自分が支払った金額から考えるので1,000円のうちの20~30円と思いがちである。
しかし、お店にしたら80~90円しかない利益から20~30円払うのだから大変である。
世間でキャッシュレス決済をやめるところが増えている理由はこれである。
特に、利益率が低い業種においてキャッシュレス決済手数料の負担は死活問題になりかねない。
そのような問題があるにも関わらず、キャッシュレス決済を歓迎している店もある。
理由はいくつもあるが、支払い手段を多様にすることで多くのお客に来てほしいというのをよく聞く。
これはこれで、ひとつの営業戦略だと思う。
では、お客である私たちはどうすべきなのだろう。
私は「個人経営のお店ではキャッシュレス決済を使わない」と決めている。上に挙げたように、お店の負担が大きすぎるからだ。
反対に、上場企業やそれに準ずる大きな会社が経営する店舗ではキャッシュレス決済を使うことがある。こうした店舗はそもそも体力があって手数料負担では経営が苦しくなり難いし、売上に比例して決済手数料がディスカウントされていると考えられるからだ。
お客からすると、キャッシュレス決済を使うとポイントが貯まる。使い慣れると現金払いより支払いがスムーズに行えるなど利点が多い。
だが、資本主義社会で物を買う行為には、そのお店なり会社の将来に一票を投じるのと同様の意味があるといわれる。
お気に入りのお店や会社にはできるだけよい形で商売や事業を続けてほしいと思う。
そのことを考えれば、少々のポイントや利便性に目をつむって現金で支払うことがあってもいいのではないか。
これは、あくまでも私の流儀である。
みなさんは、どう思われるだろうか。